考えない葦

日々のメモ

シスターモルフィン

ちょっとした想い出話をひとつ。

 

とあるギタリストがいて、モルヒネ漬けでステージに立っていた。

 

曲はストーンズのカバーで悪魔を憐れむ歌。

 

捻りなしのペンタ一発のギターソロ‬、‪ホンキートンク気味のオーバーチョーク、弾き倒して戻ってこれなくなったらサイドギターにソロをぶん投げる。

 

マジかよ、キース!って思いながらもミックテイラーは弾いていたんだろうなぁとぼくは思った。

 

一瞬でもバンドメンバーであり、ライブもした。

 

出会いは良く溜まり場にしてたライブバーでのセッションの日。

 

たまたまぼくがベースを弾いてて女だと思ってナンパされたのが始まり。

 

それからいろいろ連れ回してくれて色んな出逢いが増えた。

 

どこでも呑んだくれては迷惑かけるわ、ぼくが音楽を辞めていたのを気にかけてくれ、バンドに入れて貰ったもののライブ前日にクビにされるわ、自分から女の子を誘っておいて合コン紛いのバーベキューでは女の子にガチギレして、お前ら帰れ!と追い返したりと本当にむちゃくちゃだった。

 

それでいて学校の先生でもあり、とても生徒思いで彼に教わった生徒はみんな楽しかっただろうと思う。

 

その仕事の関係で遠方に引っ越してしまい、会う機会が自然と減り、たまの電話でストーンズというかキースの話ばかり。

 

声に元気がなく、弱気でなんか嫌な予感はしていた。

 

ある日、急にこっちにまた戻って来た時にはもう残された時間がない状況だったけど、底抜けに明るくて一緒にギターを買いに行った。

 

人生最後のギター選びとはいえ本人は忘れたように笑顔。

 

売約済みの札をつけて貰っていたとはいえ、お金を払う前からギターに名前までつけてる始末。

 

ずっと一緒にいるんだと言ってはギターショップの店員さんも笑ってくれた。

 

そして、ようやく痛みから解放されたとの一報を今朝貰った。

 

悲しむべきなんだろうけど、嬉しいことの方が大きかった。

 

なんでかっていうと彼の隣にはそのギターがあったんだってさ。

 

最後の最期までギタリストであり、戦い続けた姿勢はロックンロールそのもの。

 

新しい門出に幸あれ!!!

 

ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!(紙ジャケット仕様)

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